北陸新幹線開業に伴う並行在来線問題に思うこと
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北陸本線の金沢駅以東がJRから第3セクターに移管
北陸新幹線開業に伴い【並行在来線問題】が生じる。
これは新幹線と在来線が並行する区間については在来線をJRの管轄(経営)から外して、地方自治体などに管轄を委ねられる。つまり、JRとしてはお荷物になっている在来線を捨てて収益性の高い(はずの)新幹線を得られる。これによって北陸新幹線開通で並行在来線区間となる北陸本線の金沢駅から倶利伽羅駅まではIRいしかわ鉄道、倶利伽羅駅から市振駅まではあいの風とやま鉄道がJRより経営を引き継ぐ(他、えちごトキめき鉄道、しなの鉄道の計4社)。
この第3セクター化については、地元住民にとってのメリットはあまり無くてどちらかと言えばデメリットが多い。
第3セクター化のデメリット
特急(優等)列車の廃止
JR西日本のIRに北陸本線(エリア別)の収益が記載されていなかったが、北陸と関西を結ぶ“サンダーバード”、北陸と上越を結ぶ“はくたか”、北陸と中京を結ぶ“しらさぎ”はそれなりに乗客数がいるイメージなのに、金沢駅以東が第3セクターとなる事でこれらの特急列車は金沢駅止まりとなりサンダーバードとしらさぎは一部(金沢⇔富山)、はくたかは全てが第3セクターとなって廃止となる。
このことで“新潟(直江津や越後湯沢)⇔金沢や富山”、“関西や中京⇔富山”の利用者が不便を強いられ、特に新大阪までサンダーバード1本だった富山が、必ず金沢での乗換えが発生することでアクセスが格段に悪くなる。
※金沢駅以東と記載しているが七尾線は引き続きJR
一例として、開業前後での平日夕方に特急サンダーバードで新大阪⇒富山に移動するケースを乗り換え案内(ジョルダン)で調べてみた。
北陸新幹線開業前(3月13日金曜日)
発着時間:16:46発 → 19:54着
所要時間:3時間8分
乗車時間:3時間8分
乗換回数:0回
総額:8,730円
距離:323.2km■新大阪 12番線発
| サンダーバード31号(富山行) 323.2km
| 16:46-19:54[188分]
| 5,620円( 指定席 3,110円 )
■富山 6番線着
これがまず現状のアクセス方法で、約3時間なので越後湯沢経由で東京からよりは早い。
北陸新幹線開業後(3月16日月曜日)
発着時間:16:16発 → 19:25着
所要時間:3時間9分
乗車時間:2時間58分
乗換回数:1回
総額:9,430円
距離:322.4km■新大阪 12番線発
| サンダーバード29号(金沢行) 263.8km
| 16:16-18:52[156分]
| 5,620円( 指定席 1,450円 )
◇金沢 5番線着・12番線発 [11分待ち]
| つるぎ722号(E7/W7系)(富山行) 58.6km
| 19:03-19:25[22分]
| ↓ ( 指定席 2,360円 )
■富山 14番線着
発着時間はその時々の問題なので置いとくとして、、乗車時間は新幹線を使うので10分短縮されるも所要時間は乗換があって1分遅くなり運賃は700円高くなる。つまり、このケースでは乗車時間は短縮されるも、所要時間はほぼ同じで運賃は700円アップ、そして乗換が発生する。
北陸新幹線開業後(3月16日月曜日) 但し、新幹線を使わない
発着時間:16:16発 → 20:12着
所要時間:3時間56分
乗車時間:3時間30分
乗換回数:1回
総額:8,870円
距離:323.2km■新大阪 12番線発
| サンダーバード29号(金沢行) 263.8km
| 16:16-18:52[156分]
| 4,750円( 指定席 2,900円 )
◇金沢 5番線着・6番線発 [25分待ち]
| IRいしかわ鉄道(富山行) 17.8km
| 19:17-19:34[17分]
| 360円
◇倶利伽羅 ≪直通≫ [1分待ち]
| あいの風とやま鉄道(富山行) 41.6km
| 19:35-20:12[37分]
| 860円
■富山 5番線着
運賃をできるだけ抑えるパターンだが、所要時間は48分増、乗車時間は22分増で更には運賃はこれまでより140円アップしてしまい乗換も発生する。新幹線との差額が560円なので特別安くなるわけでもない…いまいち。
日中帯の時間については、乗車時間を早めるなり調整のしようでなんとかなるが問題になるのは始発。
富山から新大阪へは始発でも間に合わなくなる
これまでは始発のサンダーバード2号に乗れば8時17分に新大阪に着いていたが、このサンダーバード2号が金沢始発となり富山⇒金沢でこれに間に合う電車は現在予定されておらず、始発から乗って間に合うのはサンダーバード4号でもなければ6号となって新大阪への到着は9時19分となってしまう。
つまり、9時からの打合せには間に合わせようと思えば、前乗り、金沢駅までの自家用車に移動してサンダーバード2号に乗車、高速バス等となる。
運賃の値上げ
IRいしかわ鉄道では運賃が1~5年目はJRの1.14倍、6年目から11年目までJRの1.19倍と約20%増となっている(定期についてはほぼ据置)。
青春18きっぷの使用に制限が加わる
JRが一日乗り放題になる青春18きっぷもJRから第3セクターに移管されたことで、通れなくなるわけではないものの金沢⇔津幡間についての途中下車は認められないよう。
最後に
北陸新幹線開業はどうしても“東京⇔金沢”のイメージが強い。それは、この新幹線の両端であるというのもあるが、やはり“金沢”は観光地としてわかりやすいからだと思う(なんて言うと、「これだから金沢市民は…」と言われそうだけど)。
しかしながら、一番変化の大きいのは上にも書いたが富山だとおもう。これまで大阪寄りだったのが、新幹線開通で東京寄りに変わり(大阪が3時間、東京が4時間から大阪が3時間、東京が2時間)、空の便については羽田便以外も外国航空の減便が決定している。
この並行在来線問題自体は前々からわかっていたことだし、石川県や富山県に住む人の中には新幹線開通を手放しで喜べない人も少なくないとは思う。もちろん、これは住民だけの話しだけではなく、JR西日本の北陸エリアで働いている人のどれだけかは、ノウハウが全くないに等しいIRいしかわ鉄道なり、あいの風とやま鉄道に出向となることは間違いないだろう。
最後の最後に
“最後に”が長くなってきたので、一度区切りを入れてもうしばらくお付き合いを。
JR西日本に見捨てられ(?)第3セクター化された“IRいしかわ鉄道”と“あいの風とやま鉄道”、第3セクターとしてお互い協力して成功してほしいと思うが、この短い区間(特にIRいしかわ鉄道なんて金沢駅と倶利伽羅駅を入れても4駅しか無い)を別会社にする必要はなかったと思う。やはり不仲な(?)2県の確執とか大人の事情とかがあったのかな…(勝手な予想です)
あいの風とやま鉄道はJR西日本のICCOCA導入を決めているのに、IRいしかわ鉄道は導入の予定がないと言うことで、「これまで自動改札ですらなかった北陸本線が一気にIC化か?」と思ったが、それも当分は無さそうだ。
そんなわけで「お祭りムード一色の北陸新幹線開業の裏では、皆が手放しで喜んでいるわけでもありませんよ」と言うお話しでした。
でもまぁ、超個人的な話しをすれば北陸本線自体ほとんど使っていなかったし、最寄り駅の西金沢駅は今後もJR管轄なので当分は関係ないか…あっ、でも北陸新幹線が延伸となって福井駅まで伸びれば間違いなく第3セクター化するから、その意味ではIRいしかわ鉄道は今は4駅でも今後の可能性(加賀温泉駅?大聖寺?まで)は秘めているのか!?