北陸新幹線開業から半年、金沢の“いま”を調べてみた
北陸新幹線開業が3月14日なので、今月の14日で半年が経過したことになる。
そこで、新幹線開通後の金沢(石川県、北陸まで含む場合も)の今をまとめてみた。
北陸新幹線
【評価:○】課題はあるが概ね好調な滑り出し
開業から3ヶ月時点では、JR西日本としては概ね予想通りとの見方。
JR西日本は18日、3月14日に長野―金沢間が開業した北陸新幹線の3カ月間の利用状況を発表した。6月15日までの利用者数は、上越妙高(新潟)―糸魚川(同)間で、のべ246万人に達した。
(中略)
JR西日本は、上越妙高より西側で運行しているため、この区間で利用者数を数えている。昨年同期の在来線特急の利用者数と比べると、3・25倍に増えた。4月は3・21倍、5月は3・46倍で、6月は3・60倍だった。3カ月間の平均乗車率は48%だった。
真鍋精志社長は18日の会見で「土日の観光目的が中心だが、平日のビジネス利用も少しずつ増えている」と述べた。
また、真鍋社長は、北陸新幹線の利用客が「金沢から広域に動くのを促進したい」とも発言。「能登や福井、高山、五箇山や白川郷ルートにもう少し力を入れたい」と強調した。
開業3ヶ月間での北陸新幹線の乗車率47%で、東海道新幹線(約60%)と比べれば低いが東海道新幹線は別格な上に、北陸新幹線は、東京(上野)⇔高崎で通勤利用している人も一定数いる。また、新幹線で満席の状況を恒久化することは必ずしも正解ではないだろうし(乗りたいと思った時に乗れる利便性)、これでも利益は十分に出ているよう。
「当初は4割程度と想定しており、かなりの利用があった」と評価した。
また、お盆期も好調だったことが伺われる。
JR西日本金沢支社がまとめたお盆期間(七~十七日)の利用状況で、北陸新幹線の利用者数(糸魚川-上越妙高間)は三十七万九千人で前年の在来特急との比較で二・五一倍だった。かがやき、はくたか計七百本のうち二百十三本で指定席が満席になった。
JR東日本高崎支社は夏期間(7月17日~8月17日)の輸送概況を発表、輸送人員は前年比14・1%増の385万2千人で、期間の長短はあるものの同支社がデータを取り始めた平成15年以降では最多となった。前年を上回るのは4年連続。お盆期間(8月7日~17日)では前年比18・3%増の149万人で、こちらは5年連続して前年を上回った。
金沢は新盆が多いので、里帰りで7月、お盆や夏休みの観光で8月と乗客が分散していいかもしれない。
タイプ別では、金沢⇔東京の「かがやき」や「はくたか」が上記の通り好調だが、金沢⇔富山の従来特急サンダーバードやはくたかが走っていたシャトルタイプ「つるぎ」もまた好調のようだ。
北陸新幹線「つるぎ」の乗車率の開業から3ヶ月間の乗車率が約20%であることがわかりました。これは、2015年6月24日の富山県議会予算特別委員会で、自民党の矢後肇議員がJRからの聞き取り結果として述べたものです。中日新聞富山版によると、JR西日本金沢支社はこれについて「想定内の乗車率」としています。
乗車率が約20%で「好調」と言うのも、少しおかしな話しのように聞こえるが、開放する車両を限定するなど営業努力でコストを抑え利益を出すビジネスモデルとなっているらしい。
また、冬場のスキー需要を見越して荷物用スペースをすべての車両に設置するそうで、このような取り組みは実にオモシロイと思う。
JR東日本(東日本旅客鉄道)とJR西日本(西日本旅客鉄道)は9月3日、北陸新幹線の車内に荷物置場を設置すると発表した。これは海外からの旅行客や、冬期にスキー・スノーボードなど大型の荷物を所持して利用する旅行客のためのもの。2社は北陸新幹線で使用しているE7系、W7系車両に10月5日より順次改造を行ない、12月下旬までにすべての車両で設置を完了させる見込み。
飛行機(JAL / ANA)
【評価:×】利用客数は大幅減、小型化するも搭乗率の維持も叶わず減便が視野に
飛行機はJAL/ANA共にかなり厳しいようで、想定以上に落ち込んでいる。
両空港の羽田便はともに機体を小型化したが、航空各社とも便数を維持し1日6往復運航する。だが、新幹線延伸から2カ月間の羽田―富山の全日本空輸便搭乗者数は、前年比で38・7%減った。羽田―小松の全日空便は4月実績で41・3%、日本航空は34・8%の減少だ。
搭乗率で見ると、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)は使用機材を小型化したので、さほど影響を受けていないように映る。しかし、羽田便の利用者数は大きく落ち込んだ。3月14日~4月30日の小松空港の羽田便利用者は前年同期比で33.7%減、富山空港は3月14日~5月15日で同28.7%減となっている。
いち利用者とすれば、片道10,000円を切る航空券が手に入るようになったのは嬉しいことだ。ただ、JALこそはまだ中型機のB767を残しているが、ANAは完全に小型機のB737とA320に置き換えてしまっていて残念な思いはある。
3月14日~4月15日の開通後1ヶ月では前年比33.7%減であったが、4~7月では41.2%減少と下げ止まらず。そしてついに先月、ANAから羽田⇔小松便を来春を目途に減便を検討しているとの話しも。
減便回避には【小松便で1便(片道)あたり12人、富山便では30人を増やす】が合意目標となっているが、片道で12人、往復で24人、6往復で144人、そしてこの支援をANA限定とするわけにもいかないと思われるので、JAL/ANA均等に搭乗した場合には、倍の288人を目指さないといけない計算。かなり厳しいだろう。
一方、全日空は8月、小松・富山と羽田を結ぶ各6往復について、来春から最大2往復を減便する可能性があると表明した。
同社は路線維持を望む石川・富山両県と、比較的高い運賃を払う出張客の獲得に向けて協力する方針。両県は空港までの交通関係の費用を一部補助するなど法人利用の拡大を支援する考えだ。
合意した目標では小松便で1便(片道)あたり12人、富山便では30人を増やす必要がある。機体の定員の1~2割を上積みする「非常にハードルが高い目標」(同社)。関係者にとって、数カ月でどれだけ実績をあげられるかが勝負になる。
今は減便を予定していないJALも、今後の状況次第では減便の可能性は少なくないのでは。
全日本空輸が現在1日6往復を運航している羽田―小松(石川県)線について、2016年3月下旬から同5便に減便する方向で検討していることが20日、分かった。今年3月に北陸新幹線が金沢まで延伸開業した影響で、利用客が大きく減少しているため。一方、日本航空は現時点で、同路線の運航便数を現行の同6往復から減らす計画はないという。
【追記】減便が決定しました。
ホテル・飲食
【評価:◎】北陸新幹線効果で非常に高い稼働率、雇用も改善
ホテル業界は大盛況のようで、石川県内のシティーホテルの稼働率が大阪と並んで全国首位とのこと。
そもそも、シティーホテルは金沢市内の駅と町中に集中しており、数もそれ程多くないので統計的に有利とは言えるが、それでもかなりの恩恵を受けている。
観光客の増加で6月の石川県のシティーホテル稼働率は85.8%と大阪府と並ぶ全国首位だった。高い稼働率を背景に金沢市内のホテルの宿泊料金は「週末は前年比3~5割上がった」(同市のホテル幹部)。
また、飲食店や観光地もこの恩恵を受けており、名所の1つである兼六園は前年比で1.4倍。飲食店は従業員不足が深刻化しており、人もなかなか集まらないそうだ。
週末ともなれば観光名所は多くの人でにぎわい、飲食業などを中心に従業員が不足。地域全体の求人倍率を押し上げている。宿泊施設も満室となるなど、まずは地域経済にプラスの影響をもたらしているようだ。金沢市にある日本三名園の一つ、兼六園では、今年3~8月の来園者が前年同期比49万人増の計167万人だった。市内のホテル・旅館も19~23日の5連休(シルバーウイーク)には満室となるところが多い。
最後に
高速・夜行バスも入れるつもりだったが、情報があまり出ていなかったので今回は見送った。次回は開業1年のタイミングかなと思ったが、初年度からいきなりコケるなんてことはまずないだろうから2年目くらいかなと。
ただ、新幹線 VS 飛行機と限られたパイを奪い合うような構図になることは望ましくなく、パイを拡大して分け合うような取り組みがこれから必要となってくるだろう。
特に現在は福井方面への北陸新幹線延伸の話も上がっているが、「今の小松空港を支えているのは福井県民では?」と言われるくらいに、福井県の利用者が増えており、ここで新幹線を通せば羽田便減便に歯止めが利かなくなる気もする。
小松と東京を結ぶドル箱路線「羽田便」の利用者が新幹線に奪われ、最大で前年同月比4割減。回復の見通しは厳しい。このため航空会社や空港関係者は、新幹線が通っていない福井県内の利用客が「路線の命運を握る」とみる。福井県が「小松は福井の空港というくらいの思い」(西川一誠福井県知事)と位置付けていることもあり、福井方面の利用客を掘り起こそうと必死だ。
北陸新幹線で航空事情が様変わり 小松空港はまるで福井の玄関 経済 福井のニュース |福井新聞ONLINE:福井県の総合ニュースサイト
公共交通機関は乗車機会が減れば減るほど、利用者はそれ以上に減ってしまうことが珍しくはないので、ここが正念場となるだろう。
かく言う、自分は今週末に北陸新幹線開通後は初めて長期の休み(シルバーウイークと言う)に帰省するが、会社から羽田空港よりは東京駅の方が近いので、北陸新幹線を金曜日の夜に取ったが…